この巻で特に凄いのは、やはり最初と最後のエピソードでしょう。
最初は、何と原稿がページをめくるごとに回転していき、最後には真っ白な背景に台詞だけになったりします。漫画の表現方法そのものがネタになるというのは、カスミ伝のような事例もあるので、けして目新しいわけではありません。しかし、多数のファンを抱えたメジャー誌の人気連載で、そのような大胆なチャレンジを行うことができる……というのがこち亀の凄いところですね。
最後のエピソードは、秋葉原にレコード針を買いに来て、まだ売っていた真空管を見て新婚時代のラジオのことを思い出してじーんとなる部長の話です。基本的には、懐かしい思い出の話なのですが、今時の秋葉原の風景の中で進行することで、逆に深い味わいが出てくるところが面白いですね。